WITCH・TORIP・TO・WOLF
第三話 御伽の国の魔女
―――――今日は とても疲れたなぁ・・・・・・・・
狼男と出会って・・・・・・おとぎ話を信じかけて・・・・・・
明日になったら きっと消える
そうよ これは夢ね
目を開けよう もう町にいるわ
「何寝言いってんだ」
(・・・・・・・夢じゃなかった)
不機嫌そうな狼男。その隣にはさらに不機嫌そうな少女。
はっきり言って、異様だった。
(何もかも夢だったら良かったのに・・・・・・)
ヴィズからもらった毛布を鼻まで持ってくる。
この時期の朝は、ひどく寒い。
「っは・・・・・・はっくしゅん!」
大きなくしゃみが、森に木霊する。恥ずかしくなったリーティは頭から毛布を被る。
それを見ていたヴィズが、焚いた火で焼いたアントワの実をリーティの方に転がす。
パーティスの蜜がかけられていて、とても艶やかで美味しそうだった。
「食え」
短くそう言うと、自分は生のまま食べ始めた。
おずおずと、リーティも実を口に運ぶ。
見かけ道理、とても甘くて美味しい味だった。
(ヴィズって・・・・・・見かけによらず器用なのかな・・・)
チラッと横目でヴィズを見る。相変わらず、実を食べる事だけに集中している。
残っているアントワの実は、あと少ししかない。
「一個もらっていい?」
「・・・・・・勝手にしろ」
「・・・・・・・・・」
プーっと頬を膨らませてみる。しかしヴィズは気にも留めず、「うざ」とでも言うようにそっぽを向いた。
(なによ。ウザいんだったら助けなければいいのに)
しかし、実際は感謝している。もしヴィズに助けてもらっていなかったら、リーティは一人寂しく森で朽ち果てていただろう。
(・・・・・・・・・・・・)
リーティはヴィズの心臓に当たる部分を凝視する。
そこには、昨日と変わらない輝きでアーティファクトが在る。
(きっと・・・・・・アーティファクトを獲ったらヴィズは死んじゃう・・・・・・でも・・・・・・・・・)
アーティファクトを獲ってこなければ家に帰れず、一人前の魔女にもなれない。
(どうすればいいんだろ・・・・・・・・・)
「・・・・・・・・・ちょっと下がってろ」
突然、ヴィズが言う。
「ぇ?」
リーティが何事かと聞こうとした瞬間―――――
ドワッ!
「きゃぁっっ!!」
「伏せとけっ!!」
森の奥から強い衝撃波が放たれた。
間一髪で攻撃を避けたリーティは反動で転んでしまった。
「いったぁ・・・・・・・・・」
「危ねぇっ!!」
ドンッ!
モクモクと土煙が舞う。ヴィズはリーティを脇に抱えて、先ほどまでリーティが寝ていたところに着地した。
「ぁ・・・なにすんのっっ!!」
「・・・はぁ?お前を助けたんだろうが」
「・・・・・・・・・・・・」
「来るぞっ!」
連続して衝撃波が放たれる。地面に大きな窪みが幾つも出来る。
「誰なの!?」
「・・・・・・しらねーよ・・・・・・!」
そっけなく言うと、転がっていたステッキとソードをすばやく手に取った。
「こんなところに転がしておくなよ、馬鹿が」
「う、五月蝿いわね!さっさとよこしなさいよ!」
乱暴にステッキが投げられる。受け取った瞬間、またもやリーティめがけて攻撃が放たれる。
(避けられない・・・・・・!)
「っ!!」
ドォォォォン・・・
「・・・・・・?」
攻撃がピタリと止む。何事も無かったように、森はざわめいている。
「っっっっ!!!」
自分の手を見ると、血で真っ赤に染まっていた。
リーティ自身にはどこにも傷は無い。まさか。と思い、自分の周りを見回す。
「ヴィズ・・・・・・?」
返事は無い。
「・・・・・・ぇ?」
すぐ近くの窪みに、先ほどまでヴィズが振り回していたソードがあった。・・・血がべっとりとついたソードが。
「・・・・・・・・・何処・・・・・・・・・?」
その声がヴィズに届く事などない。そう思いながらも、リーティはそう言うしかなかった。