WITCH・TORIP・TO・WOLF
第二話 狼と魔女の戦争
「ん・・・・・・・」
むくり。とリーティは体をおこす。
周り一面樹や草が生い茂っている。所々に咲き乱れる花の色以外は緑しかない。
上をみてみると、木々の隙間から所々に蒼い空が見えている。木漏れ日が幻想的に広がっていた。
「ここ・・・アクルフェスの森・・・・?」
状況を整理しようと考え始めていたところに、
さく
と、草を踏む音が聞こえてきた。
音のなったほうに目を向ける。
「・・・・・・・・・・っ!!」
そこには男性―――――大きな耳と、ふさふさしたしっぽ、口の間から見えている牙―――――狼男がいた。
狼と魔女は、昔から対立していて、戦争も何度も起こった。
代表的な戦争、「ギミック山脈の聖戦」で、狼男達が参戦している。
その戦争をきっかけに、狼男と魔女が出会えば、どちらか一人が息絶えるまで戦い続けると言う事態になってしまった。
そして、未だに二つの種族は争っている。
リーティも、昔から言い聞かされていた話だった。
そして必ず、「狼男に会ったら逃げるか、殺せ」と念を押されていた。
今の状況では、攻撃はおろか逃げる事すらできない。
恐怖を隠すように、リーティは狼男をキッとにらむ。
「・・・・・・・・起きたか」
狼男がゆっくりと口を開く。出てきた言葉は意外な言葉だった。
「へっ?」
「・・・・・・起きたかと言ったんだ」
「えっと・・・・・・と言う事は・・・貴方、寝ている私を見過ごしていたった事?」
狼男は答える代わりに、手に持っている皮の袋からキラキラ光る液体が入った小瓶を取り出した。その小瓶をリーティの目の前に突き出す。
「・・・え・・・」
「飲め」
短くそう言うと、近くにあった樹の棒を集めて火をたき始めた。
(毒でも入っているんじゃ・・・・・・)
そう思いとどまってるのをみて、考えを見抜いたように、
「毒は入っていない。変な事を考えるな」
と言った。
リーティは恐る恐る小瓶を口に近づける。くん、と匂いを嗅いでみる。が、ローズの甘い香りしかしなかった。
その香りに推されて、液体を口に運ぶ。
とろり
口の中に甘い味が広がる。思わず笑顔になってしまった。
「・・・・・・美味いか」
狼男が居たということをすっかり忘れていたリーティは、ハッとして狼男を凝視する。
狼男は赤く熟れたアントワの実の皮を剥いている。
「・・・・・・私・・・・・・確か・・・・・・」
「誰かの魔法を受けて箒から落下。それを俺が見つけた」
リーティの言葉を遮る。リーティは驚きの目で、狼男を見つめる。
「私・・・・・・一応貴方達の敵よ?昔話を知らないの?」
狼男の手が止まる。表情は見えないが、動揺しているのは確かだった。
「俺には・・・・・・関係ない」
冷たく言うと、また皮を剥き始めた。
その答えでは納得いかないリーティは、狼男の正面に回った。
ギョッとして狼男はリーティを睨む。
「そんなんじゃ答えにならない」
「・・・・・・っ失せろ!!」
仕方なく戻る。不満いっぱいの眼差しで背中を睨む。
(・・・・・・・・・・・・!!)
リーティは見つけてしまった。狼男の心臓に当たる部分にギラリと鈍く輝く何かがあるのを。
(・・・・・・アーティファクト・・・・・・!?)
驚きのあまり、口を手で押さえる。
狼男は気づいていないようだった。
「あ・・・・・貴方、名前は・・・?」
初めて狼男が振り向いた。その表情には、哀愁が漂っていた。
「・・・・・・ヴィズ・・・・・ヴィズ・ウォルフ・エバーディン」
「ヴィズ・・・・・・ね・・・・・・」
確認したのを見ると、ヴィズは作業に戻る。
(まさか・・・・・・まさか・・・ね・・・・・・)
リーティは昔母親に聞いた物語を思い出していた。
昔、まだ戦争が頻繁に起こっていた頃。
魔女は狼男を支配する画期的な方法を見つけた。
その方法とは―――――
狼男のアーティファクトを自分のアーティファクトとし、狼男ごと自身に取り込む―――――
あまりにも残酷な方法だったので、使用は禁止された。
感情も無く、ただ別のモノの器として生かすなど、魔女のプライドが許さなかった。
狼男の力のほうが勝って、そのまま暴走する危険もあった。
だが―――――
一部の魔女は賛成し、極秘で計画を進めていた。
結果計画は失敗し、違反者も処刑された。―――――ただ一人の魔女を除いて。
その魔女は、結局見つからなかったと言う。だが、狼男をアーティファクトにすると言う方法はまだ生きている―――――
母は、笑って「おとぎ話」といっていた。が、実際に今、リーティのアーティファクトはヴィズの心臓の様だった。
「・・・・・・なんで震えている?」
ヴィズの問いに、
「何でも・・・・・・ない・・・から・・・」
そう答えるしかなかった。