WITCH・TORIP・TO・WOLF
第一話 温もりとサンドイッチと魔法
ある魔女の家系には、一つの掟があった。
その掟とは、14歳になると自分のアーティファクトを求め、旅に出ると言う事。
しかし、それは代価が多すぎた。
そんな血塗られた掟に、今日、一人の少女が旅立つ―――――
「行ってきまーす!」
ある森の片隅に、少女の声が響き渡る。
その手には箒とステッキ。蒼がかかった紺色のローブを着ている。
頭には大きなつばがついた闇色のとんがり帽子。黄金の月のアクセサリーが付けられている。
「必ず帰ってくるのよ・・・」
母親ととれる女性が、心配そうに少女に念を押すように言う。
「わかってるよ。必ず帰ってきて、早くお嫁に行くから♪」
2人はくすくすと笑う。
「・・・・・そろそろ・・・・行くね」
「ええ・・・・頑張っていらっしゃい」
名残惜しそうに、女性は少女の手を握る。
「じゃあ・・・・・バイバイ・・・・!」
勢い良く走り出す少女。
箒に跨ったかと想うと、大地をおもいっきり蹴った。
ふわん
少女を乗せた箒は、一瞬にして大空へ舞い上がり、雲の向こうへ消えていった。
少女―――――リーティ・アルファメスタは、一度も振り返らずに黙々と進んでいく。
風にさらさらとなびく漆黒のロングヘアー。黒と言うより、藍色に近い大きな瞳。
その瞳には希望があふれていた。
「キレイだなー・・・・・こんな遠くまで飛んだのはじめてかも」
物珍しそうに、きょろきょろと周りを見回す。
しかし、まだ樹と湖以外には何も見えてこない。遠くのほうに険しそうな山々が連なっているだけだった。
「街はどっちだったっけ・・・・・。箒で行った事ないから良くわかんないなぁ・・・」
箒に括り付けておいた、ごわごわした生地のバックから地図を取り出す。
かなり不安定だが、リーティはよろよろとしながらも体制を保っている。
「えっと・・・こっちがファンティニー高原で・・・・・。バディリッシュはこっちのほうね!」
そう言うと、今度は小さな包みを開ける。中にはサンドイッチが入っていた。
「お母さん・・・・・まだ別れて一時間も経ってないのに・・・・・寂しいよ。この味・・・・覚えておくからね・・・・・」
ぱく、と大事そうに口に頬張る。その度に、サンドイッチからキラキラと光が舞う。
想い出魔法と、元気魔法がかけてあった。
最後の一口を、口に頬張る。いつの間にか、リーティの瞳からは涙がこぼれていた。
「何よ・・・・・悲しみ魔法でもかけてあったのかな・・・・・・」
自分の冗談に、くすっと笑う。
「さぁーて!元気もりもりでいくわよー!」
そう自分に言い聞かせると、しっかりと前を見据えた。
「・・・・・・あいつか?」
「ああ。しっかり狙えよ。俺達は手伝えねぇんだから」
「ちっ。わかってる」
「じゃ、楽しみにしてるぜ」
「・・・・・さっさと失せろ」
「おー怖」
「行くぞ・・・・」
「ん?」
ふと、リーティは箒を静止させる。きょろきょろと頭をせわしなく動かす。
「なんだろ、今の音」
静かに耳を傾ける。しかし、聞こえてくるのは風の音と木々がざわめき合う音だけだった。
(気のせいかな)
そう思い、また箒を進ませる。
と、前方にキラッと光るものが見えた。よく見ようと、リーティは体をぐいと前に突き出す。
(・・・・・・・魔法・・・・・・・?)
「デバイス・アンボルト!!!」
ブワワッッ!!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
バリバリと、魔法の電気がリーティを襲う。
前のめりになっていたリーティはバランスを崩し、まっさかさまに箒と一緒に落ちて行った。
「チッ」
「あーぁ。めんどくせぇ事になったなぁ〜」
「てめぇ他人事みてーに言うなよ」
「実際他人だろが」
「・・・・・・・・・・・・」
「おら、さっさと行けよ」
「・・・・・・今度あったらてめぇの舌噛み切ってやる」
「はいはい。いってらっさーい」
「・・・・・・・・・・・・」