アリスの誓い
「すごい、すごいっ!はもったよ、すごいー!」
歌一つで興奮するなよ
でも本当にすごかった
なんであんなに綺麗にはもったんだ・・・?
「ね、もしかしたら、ハート王国とスペード王国って、もしかしたら昔は同じ国だったのかも!」
・・・・・・・・・はぁ?
なにをほざいているんだ この女
スペード王国がハート王国みたいな下位な国と同じだったわけ無いだろ
「下位な国ってなによ、下位って・・・」
アリスがこっちを向く
怒鳴るんだったら怒鳴れよ
「果物が春に実り、冬には枯れる。そして人を生み人を殺す。そんな、素敵な王国よ」
ぞわり と背中に何かが走った
馬鹿じゃないのか
なんで人を殺すのが 素敵なんだよ
「それが自然だから」
それだからって なんで素敵なんだよ
訳がわからない
この女 嫌だ
「だって本当は、銃や大砲は生まれるべきではなかったと思うの。自然の摂理に沿ってないんだもん」
銃や大砲は敵国を倒すため
そして栄光を手に入れるため
その知識を得たということも 循環の内にはいるだろ
「まあ、そうだけどね・・・」
あはは と忌々しい鈴の音のような どこか寂しい声で笑う
「でも人を殺す道具なんて要らない。人は自然に死ぬべきだわ」
何かが
切れた
「きゃっ・・・・・・」
女の小柄な肩を強く押し
そのまま馬乗りになる
「あ、ありす?」
僕よりも少し年上だと思う女をこんなに簡単に押し倒せるとは
さっと腰に手を伸ばし 常時装備している短剣を滑り抜く
銀色の刃が 月の光を反射して 妖しく輝いた
かっ
女の頬すれすれに短剣を突き立てる
女は慌てるそぶりも見せず
驚いた顔でこちらを見つめている
「どうしたの」
その落ち着いた声が 更に僕の怒りに油を注ぐ
うるさい
「痛っ!」
女の肩を刃で掠める
風に晒されている白い素肌に 赤い筋がひとつ出来る
「えと・・・ごめん、私気に触るようなこと、言った?」
なおも冷静な彼女の首に刃を突きつける
黙れ!黙れだまれ!!
お前なんかに分かってたまるか
僕の母さんがどんな風に死んだか!!
お前なんかに分かってたまるか!!
「・・・・・・お母さん、戦争で亡くなったの・・・・・・?」
図星をつかれて 更に殺意がわく
こんなやつこんなやつこんなやつ
死んでしまえ死んでしまえ死んでしまえ
いい子ぶりやがって なにが人は自然に死ぬものだ
僕の母さんは自然に死ねなかったんだ
あんな形で死ぬ事なんて絶対に無かったはずなのに
「お前に何が分かる!!」
そういって 大きく短剣を振り上げる
そこまできても 女は悲しそうな目をしているだけで
急に悔しくなった
悔しくなって 何故かまだ殺したくないと思った
でも短剣は 真っ直ぐと女の首に―――――
ド ォ ォ ォ ォ ン
ぴたり と振り下ろす手が止まる
スペード王国から聞こえたはず
そちらにアリスと同時に顔を向ける
暗い暗い星をちりばめた青灰色の空に
赤い赤い焔色の炎が
よく映えていた