秘密の楽園
朝日がキラキラと輝く、マダイン・サリの朝。
鳥がピチチと鳴き、朝を彩る。
「ふわーぁ・・・」
むくり。とエーコが体をおこす。爆発したような酷い寝癖の頭を一回ふるんっと振るわせる。
「んむー・・・」
目をこすりながら、再びベッドにもぐりこもうとする。と、
「エーコ嬢、お客様です」
「はぇー?」
寝ぼけた声を出しながら、のろのろと洗面所へ行き顔を洗う。
(まったくもう・・・。誰よ?こんな朝から・・・。睡眠不足はレディの敵なのに・・・)
ブツブツと文句を言いながらも、いつもの服に着替える。頭のリボンも確り整えて、角を丁寧に磨く。
「あの・・・エーコ嬢・・・?」
「なぁにー?今エーコ忙しいの!」
「お客様がずっと待っているのですが・・・」
「レディの身だしなみぐらいの時間も待てないような人はお客様じゃないわ!!」
かなり無茶苦茶な言い訳を言いながら、少しだけ髪を梳かす手を早める。
「はいっ!完了!モリスン、いいわよ呼んで!」
モリスンが少しだけ頭を下げて玄関へ向かう。と、
ズベッ!!
顔から転ぶような、聞きなれた音がしてきた。
「ん?・・・まさか・・・!」
「え、エーコ、おはよう」
おでこ辺りをさすりながら、ビビがにこやかに笑っている。
「ビビ!なんでここに!?」
「え・・・?だってエーコがクポの実狩りに行くって言ってたから・・・。エーコが誘ったんじゃないかぁ」
「あれ。そうだっけ?なんか言った様な気がするけど・・・」
キャハッと可愛く(少なくともエーコはそう思っている)笑う。その様子に、モーグリ一同&ビビは苦笑する。
「えっと。じゃあちょっと待ってて。すぐ用意するから」
奥の部屋に駆け込む。アクセサリーボックスをあけると、手当たり次第に付け始める。
(ふっふっふ〜♪男の子って言うのは、可愛い子に弱いのよね〜♪可愛さをもっと引き立てるには、やっぱりアクセサリーが一番!)
腕には、キラキラしたブレスレット。頭にはリボン、カチューシャ、レース。首にはネックレス、チョーカー。腰にはチェーン。
更には、角にまでキラキラしたアクセサリーが付けてある。
「あとは!追憶のイヤリングで完璧・・・☆」
パチリ。と音をさせて、イヤリングを確りと耳に付ける。
「おまたっせ〜〜〜〜♪」
全身ジャラジャラのエーコを見て、全員がひいたのは言うまでもない。
「ねぇ・・・エーコ。そのジャラジャラ・・・クポの実を採るのにはいらないんじゃ・・・」
「ジャラジャラじゃなぁぁぁい!アクセサリーよ!ア ク セ サ リ ー!!」
「・・・どっちでもいいよ・・・」
リンドブルムの城下町。色々な人が笑顔を交わしている。
歩くたびに、「ジャランジャラン」と音を立てるエーコは、当然道行く人の目を引く。
ビビは恥ずかしくなって、大きなとんがり帽子を深く被った。
「ところでビビ。確かビビがクポの実の穴場を知っているのよね?」
「うん。前にたまたま行った所なんだけど、本当に美味しそうなクポの実がたっくさんあったんだぁ」
頬を押さえながら、笑顔で言う。その笑顔に、エーコの胸が高鳴る。
(・・・やっぱり・・・エーコはビビの事が好きなのかな・・・?)
少し前から気づいていたことだった。ジタンの事が好きだと思い悩んだときも、ビビはいつもとなりで静かに相槌をうってくれた。
無意味な慰めなどしないで、ただエーコの気持ちをずっと聞いてくれていた。
そんなことが続き、だんだんとエーコの気持ちは動いていった。
(・・・まだよく分からないけれど・・・誰かのためにおしゃれしたいって・・・スキってことかな・・・?)
「エーコッ!前、前!!」
ゴッチーン!
「あいたぁッ!?」
考え事をしながら歩いていたために、エーコは目の前に迫っていた看板に激突した。看板には、エーコの角のあとがくっきりと残っていた。
「な・・・!なによ!これっ!!なんでエーコの前にあるのよっ!!」
「ご、ごめんね、エーコ・・・。僕もぼーっとしてたから・・・もっと早く言えば良かったんだけど・・・」
「え?あ、いや。ビビのせいじゃないわよ!よそ見してたエーコも悪いんだし・・・・・・」
「エーコ、こっち向いて?」
ビビがエーコのおでこを撫でる。擦り剥けて血が滲んでいる。
「ぇっ!?ちょ・・・ビビ?」
「痛いの痛いの飛んでけーー!」
大きく手を振りかざすと、右手の指を一本だけ突き出した。その行動に、エーコは落胆する。
「・・・ビビ。そんなんで直るわけないでしょ・・・」
と、思った瞬間
ポワワンッ
「・・・え?」
いつの間にか、小さな石がビビの手の中にあった。
その石はエメラルドのような色で、微かに光を帯びていた。
「・・・ビビ、その石いつ出したの?」
にこっとビビが微笑む。いつもの微笑とは少し違う、悪戯っぽい微笑だった。
「えへへ〜。あのね、マジックって言うんだ」
「まじっく?」
「うん。皆がびっくりするような事をするんだ。魔法を使ってないのに人が浮いたり、今みたいに突然物が現れたり」
「へぇー!すごいのね!」
えへへと、ビビが得意そうに笑う。石をエーコのおでこにあてる。
「この石はね、ポーションを固体にしたものなんだ。黒魔導士の村でしか創られていないんだ。傷口とかに当てると、すぐによくなるんだよ」
石は微かな光を放ちながら、エーコの傷をみるみる直していく。
3分経たないうちに、傷口は完全にふさがった。
「はいっ!おしまい!」
「あ・・・ありがとう・・・」
真っ赤な顔を隠すようにエーコが俯く。ビビは満足そうにニコニコ笑っている。
(やっぱりエーコ・・・ビビが好き・・・)
「わぁーーー!!」
ビビのいう『穴場』は、リンドブルムのすぐ近くにあった。
リンドブルムの陰に隠れていた。外から見るとただの崖のようだが、近くでじっくり見てみると小さな穴がありそこから『穴場』へいけるのだった。
『穴場』は少し高みにあって、中からだと大陸が見渡せる。少し奥へ行くと、崖になっていた。
「こんな高いところ、空から見たらすぐ分かっちゃうと思うけどなぁ」
「大丈夫だよ。樹が生い茂ってて、空からじゃ見えないし、崖の上だから地上からも見えないんだ」
「じゃあここはエーコとビビだけの秘密の場所ね!誰にも言っちゃダメだからね?」
「うん!」
秘密というのがエーコは嬉しかった。
(『秘密はお互いの距離を縮める』・・・イヤーン!エーコこまっちゃーう!)
無意識に顔がにやけていたのか(それもかなり危なく)、ビビが心配して声をかけた。
「・・・エーコ?」
「ハッ!ううん!なんでもないの!さ、さあ!クポの実を沢山採るわよーーー!」
恥ずかしさを隠すようにエーコはビビに背を向けた。
(・・・やっぱりアクセサリー邪魔だったかなぁ・・・)
実を採ろうと手を上げるたびにジャラジャラと音をさせ、顔にビンタしてくるアクセサリーは、邪魔以外の何物でもなかった。
(まったく・・・。誰よ!エーコにアクセサリーを付けさせたのは!)
アクセサリーを付けさせた張本人が悪態をつく。
「あーッ!もうだめーーー!」
ペタンと地べたに座り込む。安物ではあるが、宝石もついているのでかなり重い。
アクセサリーを睨むと、手当たり次第に乱暴にはずし始める。
「エーコ・・・。壊れちゃうよ・・・」
「だって重いんだもん!邪魔なんだもん!」
小さな子供のようにじたばたと手足を動かし抗議するエーコを見て、ビビがため息をつく。
「だから言ったじゃないか・・・そんなものクポの実狩りにはいらないって・・・・・・」
バシッ!!
「痛っ!!」
エーコが思いっきりビビにアクセサリーを投げつけた。かなり痛い。
「な、なに!?」
「・・・誰の為に・・・おしゃれしてると思ってんのよ・・・」
エーコの後ろから、物凄い殺気が出ている。じりじりとビビに近づいていく。
「え、エーコ・・・」
「ビビの・・・・・・ぶわかぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁあぁあっっっっ!!!!!」
ホーリーをビビに直撃させる。当然、ビビは気絶する。
「うわぁっ!」
「もう知らないッ!!」
のびているビビにかまわず、エーコは森の奥へと消えていった。
「・・・ビビの・・・バカ・・・」
さっき居た所からさほど離れていない森の端のほうの崖。リンドブルムの城下町がよく見える。
「頑張って・・・おしゃれしたのに・・・・・・・・・ニブチン・・・」
プチプチと手元の草を抜いては崖下に投げる。涙を乾かそうと、顔を上げる。
「痛っ!」
突然、耳に痛みが走る。耳に触ってみると、『追憶のイヤリング』に髪が絡まっていた。
「もう・・・!なによ!エーコが何をしたっていうのよ!!」
乱暴に髪を引っ張る。しかし、余計に絡まっただけだった。
大きなため息をつくと、丁寧にイヤリングをはずす。
(なかなか外れない・・・エーコこんなにきつく締めたっけ・・・?)
だんだんと乱暴な手つきに戻ってくる。イライラとイヤリングを強く引っ張る。
コロッ・・・
「あっ!!」
外れた衝動でイヤリングがエーコの手から滑り落ちる。
そのままエーコの体を伝い、崖下へ真っ逆さまに落ちて行く。
「っっ!ダメッッ!!!」
咄嗟に、手を思い切り伸ばし、イヤリングを掴もうとする。
努力も虚しく、手は宙を掴む。
「ダメェェッ!!!」
グイと、体ごと崖下に向かって突き出す。
パシッ
(取れた!!)
ほっとしたのも束の間。今度はエーコが危なかった。
「・・・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・・・・?」
目下には川が見える。周りは空や崖。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
咄嗟に、崖の突起を掴む。右手にはイヤリングを掴んでいるので、左手で全体重を支えている。
(どうしよう・・・こんな状態じゃ魔法も使えない・・・)
ガラ、と突起の一部が崩れる。崩れた欠片は地上へ真っ逆さまにおちて消えた。
(いや・・・いや・・・まだちゃんと恋したこともないのに・・・・・・
ガララッ
かなりのひびが入る。今にも崩れてしまいそうな勢いだった。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ガラララッ!!
「エーコ!!」
「ぇ・・・」
エーコの左手は、ビビの暖かいぬくもりに包まれていた。
「ビビ・・・?」
「動かないで!すぐに助けるから!!」
(ビビ・・・)
グイ、とビビの力とは思えない強い力でエーコが引き上げられる。
「もう大丈夫だよ、エーコ」
「び・・・び・・・・・・」
ぬくもりに安心し、さっきまでの恐怖が一気に襲ってくる。
「うわぁぁぁぁぁん!ビビーーーーーーー!」
「落ち着いた?」
「・・・・・・うん・・・・・・」
真っ赤に目を腫らし、ビビの方に頭を預けているエーコが弱弱しく答えた。
「・・・ビビ・・・・・・あのね」
「うん?」
真っ直ぐにビビの目を見る。金色に光る彼の目は、いつ見てもきれいだ。
「エーコ、ビビの事が好き」
風が流れ、草を揺らす。
エーコの紫色の髪が、ビビの顔にかかる。
びっくりしていたようなビビの目が、優しく穏やかな目に変わった。
「僕・・・正直、好きとかが・・・よく分からない」
ズキン、とエーコの胸を言葉の針がさす。
(エーコ・・・ダメだったのかな・・・)
「でもね」
俯いたエーコを見て、ビビがあわてて言う。
「エーコの隣には、僕が居たい。エーコと一緒に、いつまでも居たいんだ」
「え・・・?」
(それって・・・・・・・・・・・・)
「エーコが・・・いつでも笑っているように、僕が守りたい」
「ビビ・・・・・・」
「さっき採ってきたクポの実・・・・・・食べよう?」
「うん!!」
=あとがき=
おなじみのパターンだなオイ。
短編の処女作が困難でいいのか・・・しかもキリ番リクエストですよ!?
ビビエーとのことで書いたのですが、長すぎだろ自分orz
こんなのでよかったら、ティリア様。引き取ってくださいorz
あと400HITおめでとうございます。
ティリア様のみお持ち帰り可です。ご了承を。