ATE 一筋の光



ザワ・・・・ザワ・・・・
後方から、いくつもの音が響いてくる。
焦らせるような、そんな心地の悪い響きだった。
「っそ・・・・・・!!何なんだよお前らっ・・・!」
通じないと分かっているが、毒づかなけらばこっちの気がおかしくなりそうだった。
百近いプラントスパイダが、川沿いに抜け道へ向かうタンタラス一行を追いかけていた。
ブランクとバクーとマーカスは、ひたすら交戦しながら仲間を守り、経験者意外は残ったアイテムを持ったり、怪我人を担いだりと、誰一人余裕はなかった。
前に回りこむプラントスパイダは薙ぎ払い、後ろから迫り来る奴らは切り捨てる。
(早く早くっ・・・・・・・・こいつらを安全な場所まで・・・・・・ッ・・・・!!)
心臓の鼓動が次第に早くなる。そのことに焦りを感じながらも、必死に不安を抑え付ける。
無理矢理抑え付けたせいで、嘔吐感が更に増す。
そのとき、後方で交戦していたブランクに、五体ほどのプラントスパイダが一斉に襲い掛かった。
普段ならなんともない数だが、その内の一匹の矛先が、前を走る劇団員に向けられるのを見て。
「ばっ・・・・・・よけろ!!」
そういい終えるよりも早く、ブランクは一瞬にして跳躍し、そのプラントスパイダを思いっきり切り付けた。
急所に当たったのだろうか、そのプラントスパイダは恐ろしい断末魔の叫び声を上げ、残骸を残したまま煙のように掻き消えた。
ホッとしたのも束の間、その隙に残りの四匹のプラントスパイダが、一斉に腕にあたる鎌型のものをブランクの身体に振り下ろした。
「・・・・・・・ぁっ・・・わあぁっ!!」
幸い、ブランクの身体が貫かれる事はなかったが、その勢いで思いっきり地面にたたきつけられた。
「兄キっ・・・!」
事態に気づいたマーカスが駆け寄ろうとするのを視界の端で捕らえた瞬間、
「来るなっ!」
起き上がるよりも早く、ブランクが叫ぶ。マーカスの肩がはね、一瞬だけ視線が交錯する。
「お前は、皆を案内してさっさと抜けだせっ!」
再び鎌が振り下ろされ―――――今度はブランクもヘマは犯さなかった。
ぬかるんだ地面を蹴り、その勢いのまま四匹のプラントスパイダに蹴りをお見舞いする。
「でもっ・・・」
未だ躊躇するマーカスに、ブランクは怒りを孕んだ様な、鋭い声で叫ぶ。
「行けっ!!タンタラスを救ってくれっ!!」
それがブランクの、願いだった。
強い意志を感じ取り、マーカスはタンタラス一行へ紛れていった。
直後、急に一行の動きが早くなった。
今までは怪我人の事も考え比較的ゆっくりと進んでいたのだが、余裕など何処にも無いという事実に気づいたマーカスが、いち早く皆に指示を出したのだ。
ゆっくりと、しかし確実に遠ざかっていく一行を見つめながら、ブランクが疲れた笑みを浮かべる。
(あー・・・・・・・・・ったく・・・・・・・・)
あまり嫌な感じがしない、軽い溜息をつくと、次々と迫り来るプラントスパイダに向き直り、右腕の包帯を解く。
はらり、と風に煽られ飛んでいく、白い包帯。
それが、命の灯火のようだと、柄にもなく考える。
「ふーっ・・・」
今度の溜息は、重く圧し掛かるような物だった。
「お前ら・・・・・・・・・・」
そう呟いた瞬間、一匹のプラントスパイダが飛び出してきた。
直前までひきつけ、軽く身体をひねりながら薙ぎ払う。
後ろに回した足を思い切り前にもって行き、次に飛び出してきたプラントスパイダを蹴りつける。
ぐにゃり、とおかしな感触に顔をしかめながら、そのまま足を地面から離し、空中に大の字で留まる。

視界いっぱいの赤と緑の群れ。
時々垣間見えるぎらぎら光る鎌型の腕。
それ全てに向かって、ブランクは叫んだ。






「行かせるかあああああああああああっっ!!」