第4場面 大きな帽子が風にあおられ―――
ドサッ
「ふうむ・・・これも同じだな」
汗臭く、じっとりと湿ったブーツを履きなおす。汗臭さまで同じみたいだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「そんな落ち込むなよ」
黙って、俯き加減に、気絶させた兵士から奪った鎧を着るジタンに、ブランクが明るく声をかける。イライラしているのか、挑発的な目をブランクに向け、
「よくそんな呑気でいられるよな。モンスターまで強化しちまったって言うのによ」
「八つ当たりすんなよ。俺だって考えてんだ」
苦い笑いを浮かべながら、ブランクが肩をすくめる。ジタンがハッとしたように、顔を上げる。
「・・・・・・すまねぇ・・・・・・」
あっさりと謝ったジタンに、拍子抜けしたのか、ゴトリ、と手に持っていたショートソードを落としてしまった。
「お前さ、お姫様に会ってからなんか変わったよな」
「・・・・・・え?」
「なんかなー。素直になった?って言うか、・・・・・・あー!よくわかんねぇよ!!」
自分で言い出したくせに、自分で話をぶち切ってしまった。勝手なやつだ、と胸中で文句を言う。
「さて、と。そろそろ行くか」
すっくと立ち上がり、ずかずかとドアに向かって歩いていくブランクを、ジタンが慌ててとめる。
「ちょ、ちょっとまて!この後、2年前どうりダガーを攫うのか?それはちょっと・・・」
「はぁ?」
困惑した表情を浮かべて、逆にブランクが聞き返す。
「お前、お姫様と逢いたくねぇのか?」
「え・・・」
ドキン、と胸が高鳴る。
(・・・・・・・・・逢いたく・・・・ない・・・・・・?)
再び俯き、ぼそぼそと唇を動かすジタンを見て、ブランクがため息をついた。
「あのな、今こんな状況で喧嘩しててどうする?お前達の・・・ぁーと、あ、愛・・・?って言うのはさ、すげえんだろ?」
『愛』の部分で、いきなり声が萎んだが、確りとジタンの耳に入ってきていた。
(そうだ・・・・・ダガーだって、亡くなった筈の母親がいて、きっと複雑な思いでいるはずだ・・・俺が、ダガーの傍にいてやらないと・・・・・)
そう思うと、自信がついてくるようだった。笑顔になったジタンがパッと顔を上げ、ブランクにお礼を―――――
ゴンッ・・・・・・!
鈍い音が、後頭部で鳴り響いた。・・・心配したブランクが、顔を覗き込もうとしていたらしい。
「いっ・・・・・・!!!」
「くぁ・・・・・・ッ!!」
お互い痛さで声にならない。しばらく二人で悶えていると、
「テメーな!!もう知らねえからな!!」
額をさすりながら、ブランクが部屋を出て行く。ジタンは、一泊遅れてプッと噴出す。
「あー!お前最高!今の最高!」
今の衝突が、ジタンにとって一番の元気になった。いつものやり取りが、こんなに嬉しいなんて。
ジタンは、絶対にいつもを忘れないようにする。と心に決めた。
もう、迷わない。
そう、心に決めて、手にしていた武器を確りと握りなおす。
過去に来たのに、手の中にはさっきまで抱えていた武器が、さっきと同じ感触で在る。
私は・・・お母様を死なせない。絶対に。
意を決して、重い扉を開ける。
「・・・・・・と、確かここでダガーとぶつかるはずなんだけどな」
階段を上り、王室とテラスをつなぐ踊り場のような廊下にでる。きょろきょろと鎧で重くなった首を回し、ダガーの姿がないかと目だけで探す。
「おい、お姫様もさっきまでのこと覚えてんだろ?つーことは、何かしら動いている可能性もあるってことだぞ」
そういった瞬間、首が外れるかと思うほどの勢いで、ジタンが振り返り、ブランクを凝視する。
何か言いたげに数秒口を開閉させていたが、突然階段を蹴って階下へ向かって全速力で走ってきた。・・・否、転がり落ちてきた、というのが正しい。
「!?」
当然、すぐ後ろに居たブランクと正面衝突する。その勢いのまま、ゴロゴロと階段を転げ落ち、仕舞いには硬い石の壁に思いっきり背中を打ちつけてしまった。
・・・・・・・・・ブランクが。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッッ!!!!!」
相当痛かったらしく、悲鳴を上げようとするが、今の状況で声を上げたらヤバイと悟り、咄嗟にジタンが口を塞ぎにかかった。
「てンめ・・・!なにしやがる・・・・・・・・」
「しっ!」
痛さに震える声でジタンに文句を言おうとするが、鋭い声で制される。と、頭上の廊下から重く、強い殺気を感じ取りすぐにジタンを押しのけ構える。
「おい、なんだ、この殺気」
目線はそのままに、ジタンにしか聞こえない声でぼそぼそと問う。ジタンも廊下を見上げ、口だけを動かして言う。
「しらねえ。でもこの殺気は異常だぜ」
「異常って言うか・・・もう人間じゃないんじゃねーの・・・・・・」
はーとブランクが短い溜息をつく。めんどくさい事に関わるのは御免らしいが、もうすでに関わってしまっているのだからしょうがない。
「・・・・・・兵士か?」
「さあな・・・・・・」
殺気はそれだけで重量があるほど発生しているのに、肝心の生物の気配が全くしない。隠れているのか、それとも―――――
「あぶねえっ!!」
ブランクの声に反応してバックステップで退いた刹那、さっきまで二人がいたところに大剣が突き刺さっていた。
「なんだよこれ!?」
武器を抜く暇もなく、次の攻撃が始まる。二人の、丁度頭部を狙うように大剣が次々と力任せに投げ出される。
しかし、すばやさなら二人のほうが上だった。あっという間に階段を上り、敵の姿を見ることが出来た。
「こいつッ・・・・・・!」
ブランクが驚愕の声を上げる。近くに来て初めてわかったが―――――
「・・・・・トロール!?」
毒々しい緑色の皮膚、巨体に似つかわしい大剣と盾。間違いなくトロールだった。
「はぁッ!?なんでこいつがここにいんだよ!!」
トロールは、霧の大陸にはいないはず。2年前の冒険のときに、外側の大陸で遭ったきりだった。と言うより、そもそも城内にモンスターが居るって事がおかしい筈。
ぶんっと大剣が振り下ろされる。二人同時に、逆方向へ退く。態勢を立て直し、床を蹴って正面からトロールに体当たりを食らわす。
さすがに二人分の体当たりはきくらしく、巨体がゆっくりと廊下の手すりを越え、真下に落ちた。
しかしそこまで高さがあるわけでもないので、数秒後には何事もなかったかのように立ち上がり、獲物二人を見上げてて舌なめずりをする。
「一発で片付けるぞ!!」
「おう!」
アイコンタクトでタイミングを見計らい、同時に階段を半ば滑り落ちるような感じで駆け下りる。。
のそのそと階段を上ってきていたトロールに、二人分の蹴りと、ダガーとショートソードの鋭い刃が突き刺さる。
丁度心臓に当たる部分に、鈍く光る二つの刃が血に濡れ出す。
「ヴ・・・・・・」
短すぎるうめき声を上げたかと思うと、ぐらり、と巨体が傾き階下に滑り落ち―――――
倒れる寸前、霧になって掻き消えてしまった。
血まみれの光を失った武器が、コトン、と音を立ててカーペットに落ち、赤いシミを作る。
「・・・・・・・・・?」
「消え・・・た・・・」
脱力したように、ジタンとブランクが同時に座り込む。二人の鎧もトロールの血がべっとりとついていた。
「・・・・・・・・・・・・あー、そういえば、お姫様出てこなかったなぁ〜・・・・・・」
ブランクがふと思いついたように、そして先ほどの戦闘から話を遠ざけるようにぼそりと言った。呑気な声で、なんでもないように言うのを聞いて、
「そうだな〜」
と一度受け流してしまい、数秒の沈黙が流れた後、
「・・・っておぉいっ!!じゃあダガーは何処にいるんだ!?」
「落ち着けよ。大体予想はついてる」
なだめる様に、冷静といえば冷静なのだが、聞き様によっては呑気に言っているようにも聞こえる口調で言う。
ブランクが、何度目かの溜息をつく。ずいぶん長いように感じられて、ジタンが痺れを切らしかけたとき、
「お姫様の母さんがいんだろ。つーことは、その母さんが居る所なんじゃねーの」
「あ」
ギシッ・・・ギシギシッ!!
今まで自分がいた木の板がさほど大きくもない音を響かせて軋む。と、思ったらあっという間に眼下の石畳に落下し、バラバラになってしまった。
「ハハハ・・・・・・・・・、落ちたな・・・・・・・・・」
落ちないって言ったじゃないか・・・。ああ・・・怖かった・・・。
「まあ細かい事は気にするなって!ところでよっ!お前の名前、まだ聞いてなかったよな?」
細かい事じゃないと思うけど・・・・・・・・・・・・。
そう言おうとしたけれど、さっさと話を切り替えられてしまった。
少しだけ戸惑いながら、あまり自分から口にしない名前を言う。
「僕は・・・・・・・・・」
ボォォォォン・・・・・・ボォォォォン・・・・・・
舞台上から、鐘の様な低く重い音が聞こえて来る。2年前・・・と自覚しているときならば、私は地下の奈落にいて・・・・・・。
(ダメ、考えちゃ。私はお母様の傍にいるんだから・・・。冒険に出る事もないの。そうすれば、お母様は生きていられる・・・・・・・・・)
言い聞かせるように、何回も、何回も心の中で繰り替えす。横にはブラネ女王が嬉しそうに目を細めながら夢中で観劇している。と、
「姫様!!」
慌てたような声が背後からかかる。驚いて振り返ると、スタイナーが肩で息をしながら仁王立ちしている。
「スタイナー!無事だったのね!!」
今の今まで母親の事ばかりで微塵も思い出さなかったのだが、逢うと少しだけほっとした。ガシャガシャと喧しい武装靴の音が近づいてくる。
「姫様、これは一体どういうことですか?なぜブラネ女王様が此処に・・・・・・」
ダガーが口を開こうとした、丁度その時。
「ダガー!!」
スタイナーの声に負けないくらい大きな声が―――――声の主が、テラスの入り口、装飾が施された木製の扉の前に立っていた。
「・・・!」
「ジタンか!?」
さっきの一件もあり、顔を会わせずらくなっていたのか、ダガーが数歩後ずさりをする。
「おっさん!よかった、逢えて!」
「おい、ジタン。これはどういうことなのであるか?」
スタイナー。ジタンの言葉は完全に無視で、自分の質問を通す。少しだけ面食らっているジタンの代わりに、
「詳しい話は後だ。とにかく、劇場艇に来い!」
ブランクが早口に告げ、城内へ戻ろうとする。が、
「あなた達、何者ですか!」
厳しい声が飛んでくる。その場に居た四人がビクッとして声のした方向に視線を向ける。
あまりにも唐突に、血まみれの鎧をまとった異様な姿の侵入者が飛び込んできたので唖然としていたのだろうか。
そしてあまりにも早い話の終わりにやっと我に返ったようで、栗色の髪の女―――――ベアトリクスがつかつかとブランクとジタンに歩み寄る。
「あなた達、何処から潜り込んだのですか?その鎧はどうしたのですか?」
静かな口調だが、有無を言わせない迫力があり、どうしたらいいかわからず、途方に暮れる。
「その鎧は、アレクサンドリア兵のものですね。なぜ血まみれになってあなた達が纏っているのですか?」
シャリン、と不意にベアトリクスの腰辺りから金属が滑らかにこすれるような音がした。反射的に音のした方向を見るとベアトリクスが剣を抜いて・・・・・・
「とつげーーーーーーーき!」
「「「「!?!?!?」」」」
いきなり明るくジタンが叫ぶ。ジタン以外の関係者は、その声に驚いて一瞬体をこわばらせる。その隙に、ジタンがベアトリクスとの距離を縮め、剣を叩き落とした。
しかし勢いあまりベアトリクスと一緒にテラスの石の手すりに、思いっきり体当たりする格好になった。
――――――――――そのまま手すりを乗り越え、二人の体がゆっくりと傾き―――――
「ぁ・・・ああああああーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!」
「ジタンっ!」
「姫様っ!」
「え、お、ちょい、まてっ・・・!」
ジタンが落ちるのを見て、ダガーが咄嗟にジタンのベルトを掴む。が、二人分の重量を一人の少女が支えるのは多少無理があったようで。
ダガーの体が下に引っ張られるのを見て、スタイナーがダガーのドレスを掴む。が、ダガーに無礼な事をした。と一瞬の迷いがあったのか、踏ん張る足に力が入らず。
スタイナーまで引き摺られていくのを見て、ブランクが制止を呼びかけるが、もちろん無駄で、さらにずるずる引き摺られていくばかり。
ブランク一人で四人分の体重を支えられるはずもなかったが、一応スタイナーの鎧の突起を掴む。
案の定、あっという間に空中に放り投げられ、五人とも真っ逆さまに落ちていく。
「うわぁぁぁぁぁ!」
階下の客席では、少年というには小さすぎる男の子が兵士に追われて必死で逃げている。
しかし観客のほうは劇に見入っているらしく、男の子の方に目もくれない。
後ろから迫ってくる兵士に剣を突き出され、恐怖がピークを迎えたのか舞台上に続く階段に向かって一直線に走り始めた。
「ひとーつ・・・ふたーつ・・・」
コーネリア王が二つの月を見上げ、ゆっくりと焦らす様に鳴る鐘の音を数えていく。
ベネロとゼネロに両腕を掴まれて身動きが出来ないマーカスが、悔しそうにもがく。
ここから、クライマックス。観客達が息を呑む音が聞こえてくるようだった。
「・・・・・・ぅ・・・わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!!」
突然、すさまじい悲鳴が劇場全体に響き渡る。マーカスやバクーが驚いて顔を上げる。一人ではなく、複数の人たちから発せられているようだった。
と、その中の一人がちょこちょちょこと舞台上に上がり、更に続いて武装した兵士が駆け込んでくる。
マーカス達の周りで追いかけっこを始める。どう対処していいか分からずに、ただ呆然と見守るだけだった。
ドサッドササッ
立て続けに、今度は上のほうから布製の何かに着地したような音が響く。観客達がきょろきょろと周りを見回し、音が鳴った方向を探る。
ビィンッ!
舞台の真上でロープか何かが張る音がして、追いかけっこをしている男の子と兵士を除いて全員が舞台を凝視する。
それにつられて、自然とマーカス達が天井を仰ぐ――――――――――
ガッシャァァァァン!!!
すさまじい音と共に舞台の天井の照明や機材がガラガラと落ちていく。その光景に観客はもちろんブラネ女王も驚愕と恐れが入り混じった悲鳴を上げる。
崩壊が収まると、妙に白けた空気が流れる。静寂を破ったのは、瓦礫の下から這い出した最初の人物だった。
「姫様ぁぁぁあぁあぁああぁああぁあぁぁぁぁあ!!」
ガシャーンとまた派手な音を立ててガバッと起き上がると、一心不乱に覆いかぶさった機材を乱暴に退けて行く。
「姫様ぁぁぁぁぁぁぁ!!ご無事ですかぁぁぁぁぁ!うぉぉぉぉぉん!!姫様ぁぁぁぁぁ!!!」
勝手に大声を上げて半泣きでどんどん退けて行く。と、
「痛ー・・・・・・」
ブランクが後頭部を抑えながら起き上がる。落ちるときにスタイナーの体重に負けて少し遠くまで吹っ飛ばされたらしい。
スコーン!
起き上がって状況を把握しようと辺りを見回していたブランクの前頭部にスタイナーが投げた機材が直撃した。
「がっ・・・・・・・・・・・・」
意味不明の呻き声を上げてブランクが再び気絶する。同時に、機材がジタンの頭にも当たったようだが、こちらは衝撃で目が覚めたらしい。
「うぅーん・・・・・・」
お腹の上に乗った機材退け、ゆっくりと起き上がる。と、
むにぃっ
「ん?」
体の支えとしてついた手が、何か柔らかい物の感触を覚える。不思議に思い、手を見やると―――――
「・・・・・・!!」
ずっと手を掴んでいた人物の胸―――――ベアトリクスのふくよかな胸の上に、ジタンの手が確りと置いてあった。
一瞬にしてジタンの周りの空気が凍りつく。幸い、ベアトリクスは気絶しているようだった。ホッと胸をなでおろしたとき、
「・・・・・・ジィィィタァァァンンンンン・・・・・・」
地鳴りのような低い声が轟く。パッと振り返ると、体中から黒いオーラを出した(ジタンにはそう見えた)スタイナーが剣を振りかざしていた。
「ホアァァァァァーーーーーーーッ!!!」
「のわーーーーーーーーーーーーっっ!!」
奇声を発しながら、スタイナーがあらん限りの力で剣を投げてくる。
剣はジタンの頬をかすめ、しっぽに刺さるぎりぎり手前で着地した。死の予感を感じて一目散にジタンが逃げる。それをすかさずスタイナーが追う。
「まてぇぇぇぇぇ!ジタァァァン!!」
「誰が待つかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
必死にスタイナーから逃げるジタン。それを追う鬼のような形相のスタイナー。異様だ。
と、その様子を、少しはなれたところに落ち、とっくに気がついていたダガーが見学していた。
(・・・・・・・・・・・・あの二人は、どんな事が起こっても動じなさそうね・・・・・・・・・・・・)
内心溜息をつきながら、ふと、さっきまでスタイナーが機材の山を掘り進んでいた場所に目を移す。
(・・・・・・・・・・・・え?)
ごそ、と機材の山が揺れる。誰か下敷きになっているようだ。
(助けなきゃっ)
ぴょこんっと被さっていた幕を跳ね飛ばし、機材の山に近づく。
しかし近づいたものの、どう退かせばいいのか分からず、右往左往している内に揺れていた機材がぴたっと止まる。
(死んじゃう!)
そう思った途端、どんどんあせっていき後先考えずかなり小さい機材を引っこ抜く。
ガラガラガラガラ・・・・・・
「きゃーっ!?」
引っこ抜いた刹那、それまでバランスを保っていた機材が崩れ、ダガーに向かってなだれ込んで来た。
それに気がついたジタンとスタイナーが追いかけっこをやめ、今度はダガーに向かって一目散に走ってくる。
「ダガー!」
「姫様!」
二人が機材をどけると、
「ぷあっ」
「ぷはっ」
二つの声が、同時に二人の耳に届く。ダガーはジタンの目の前に姿を現し、一瞬だけ安心したような顔を見せ、その後少しだけ目線をはずした。
(・・・・・・・・・ま、しょうがないか・・・・・・・・・)
苦笑しながら、ジタンが安心の溜息をつく。と、ここで一つ疑問が浮かぶ。
(・・・・・・・・・二つ・・・・・・?)
一つはダガーで間違いないはずなのだが、もう一人は・・・?
きょろきょろと周りを見回すが、近くにはダガーとスタイナー。そしてベアトリクスしかいない。
(気のせい・・・・・・?)
「けほっ」
また、別の声がする。崩れた機材の向こう側に埋まっていたようで、カラカラと木製の棒が滑り落ちる音がした。
明るい茶色の大きなとんがり帽子。少し硬そうな材質のローブ。手に持っている安物の杖。
そして金色に輝く、吸い込まれそうなほど澄んだ瞳。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ビビ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」